ミャンマーのクーデター当日 のお話

はい。

クーデターなう。

クーデターて、なんですかね。

から始めるとめっちゃ話が長くなりますよね。

例えるならば。

今回のクーデターについて非常に雑に説明すると、アメリカのトランプさんが不正選挙だどうだとか喚いていたのに対して、

ミャンマーの場合は国軍が不正選挙に対して自前の武力を持って政権与党の幹部を拘束したという感じ。

そこの政治的なお話は専門家にお任せするとして、今回はクーデターが起こった今日一日のお話を書きたいと思う。

いつもの通り出勤前のジョギングのため6時に起床。

エスプレッソとタバコを嗜みながらクソみたいな気分で月曜日の始まりを感じながらをツイッターを眺めていると、「スーチー氏拘束」のニュース速報が目に入った。

もしかしたらと思っていたが、まさか…。

というのも、先週時点で国軍がクーデターをほのめかす発言をしており、可能性はゼロではないことは日本語のニュースにもなっていたのだ。

事前に知っていたとはいえ、ニュースの見出しを目にして朝から心が穏やかではなくなった。

あー

まさかの、

来ましたねー。

そして無意識にtwitterに書き込んだのは「国軍ついにやりおった」

この、人類が進化の過程で獲得した思考回路を諸々ショートカットしたこのツイート。

今読み返しても、これを書き込んだ時自分は動揺していたんだということをつくづく感じる。

で。

そんなことを考えているうちに、携帯の通信回線が不通となってしまった。

海外旅行が大好きで半日やそこらネットが繋がらなくても平気なのだが、今回ばかりは心穏やかじゃない。

海外旅行と違い、いつまで不通なのかが全く見通しがつかない。

というのも、この不通は偶然ではなく国軍によるもので、ヘタな混乱を防ぐためにネットを使えなくしたなとピンと来たからだ。

自宅の前の通りに出てみると、とろけるようにゆったりとした時間が流れている、いつものヤンゴンの早朝の風景だ。

いつも通りジョギングに出てみると、同じく平和そのものの朝で、今朝ニュースを読んで感じた心のざわめきがどっかにいってしまうほどだ。

ジョギングも中盤に入り、朝に運動している人の定番コース、カンドージ湖の外周に来たときに、いつもと違った雰囲気を感じた。

ミャンマーでは一日の中で涼しい時間帯がごく限られるため朝に運動する人が非常に多く、湖周辺は毎朝賑わうのだが、今朝は人がまばらだ。

恐らく、これから起こる最悪に備えて市民が動き始めているんだろう。

ところで、そういえば今日は雇ったスタッフの初出勤日だ。

ネットが使えないが、送迎車とちゃんと落ち合えるだろうか。

ネットが使えない中でどんな仕事を覚えてもらおうか。

そんな呑気なことを考えながらジョギングを終えた。

身支度をしてオフィスビルに来てみると、いつもなら既に明かりがついているはずのテナントに明かりがついていない。

これはどうしたものかと思いながらオフィスを開けてWiFiに繋ごうとするも、携帯回線だけでなくWiFiも押さえられているらしく全くWiFiが使えない。

こりゃ参ったと思っていると、今日初出勤のスタッフがやってきた。

初出勤の初会話「きゃめるさん、ニュースは知っていますか?」

ああ…。

知っているとももちろんさ…。

大変なことになりましたねぇ…涙

っていうか、よく出勤してくれた…涙。

使えるWiFiは知っているか、スタッフの自宅周辺は大丈夫か、スタッフの家族は大丈夫か、そんなことを話したあと、

このスタッフの直属の上司になる日本人スタッフの出勤まで場を持たせるように、

面接では話さなかった会社全般の話や私のルーツの話、オフィスビル周辺の便利スポットの話などをしていたが、一向にそのスタッフが出勤してこない。

こはいかに、と思いなんとなく廊下に出てみると、下の階に入居する日系企業の日本人の方が周囲の様子を伺うようにこっちへ向かってきた。

その方も私と同じく今日の状況が掴みきれていないようで、また私と同じく出勤してきていないスタッフがいることと連絡がつかないことに困っている様子だった。

色々話すうちにやはりクーデターに伴うなんらかの行動規制は今後あり得る話で、それがすでに始まっているのではないかというところに落ち着いた。

心が落ち着かないところ、ビジネスパートナーのミャンマー現地企業に話を聞きに行こうと、車を出すことにした。

街の中心スーレーパゴダを通ってもらいつつ街の様子を見たところ、

ネット回線が繋がらないことにより、ATMではなく銀行の窓口から現金を引き出そうとする人が目立つ。

その他はthe ミャンマーの日常といった感じだ。いつも通り、暇しているミャンマー人が屋台に屯している。

訪問先に着くと、スタッフさんが「ネットも電話もダメですねー」とのこと。

せっかくなのでコーヒーをいただきながら話をするも、彼らも何も情報が入っていないようだ。

もらったコーヒーの1/3ほどだけ飲んで早々にオフィスに戻りしばし今日初出勤のスタッフと歓談していると、今度はうちが入るテナントの向かいの日系企業の馴染みの日本人とミャンマー人の方が出勤してきた。

挨拶がてらお話をしたところ、なんとその会社のWiFiはまだ使えるという。

オフィスにお邪魔してネットを繋げてみると、まあ日本側からの連絡がわんさか。

その方々や取引先、他国にいる上司への連絡をしているとあっという間に昼過ぎになってしまった。

その会話の中には「クーデターのせいであと5分で国内のネットが遮断されるらしいです」みたいな人生で初めて打ち込むテキストも含まれている。

もちろん、「今すぐ退避帰国すべき」というご意見もある。

そんな中。

今日すでに出勤しているはずの日本人スタッフは配偶者がミャンマー人でいつも独自の情報網を持っているため、

諸々のリスクを鑑みて(というか日本大使館も自宅待機しろと言っていたらしいし)自宅に待機していたそうだ。

このスタッフは過去のバンコクの政変も経験しており、こういうケースの立ち回り方をよく知っている。

で、そのスタッフや取引先、他のスタッフと話しているうちに

・クーデターが分かった瞬間に本社から自宅待機が出た会社

・帰宅難民が出る懸念から午前中にスタッフを帰した会社

・のうのうとお昼までオフィスを開けていた会社

の三種類に分けられること、

・コロナ騒ぎの頃と同じく買い占めが始まっているがそれほどの問題にはなっていないこと

・銀行が閉鎖したことで両替所もキャッシュがなくなっていること

・どうやら道路封鎖も始まっていること

などが分かった。

昼過ぎにはこんな、こんな初出勤日だったスタッフを退勤させた。

初出勤日で色々緊張も期待もしていただろうに、まさかこんな事態で色々とお互い協力する必要に駆られ、

そして密に連絡を取り合える関係性が築けたことは思わぬ副産物だった。

自分も16時過ぎにオフィスでの仕事を切り上げ帰宅することにしたが、

帰宅の道中では午前に増して交通量が減っているのが気になった。

今のところ目立つ動きはない。

今日は前哨戦でこれからが本番

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